ミスイ春の単独公演ツアー「一華開けて天下の弱」ミスイが限界を超えた先に描き出したカオスな熱狂の一夜!

 3月より始まったミスイ春の単独公演ツアー「一華開けて天下の弱」も、5月29日(水)に 渋谷 clubasiaで行う公演をもってファイナルを迎えた。この日の当日券は「0円」という効果もあって、ミスイ初見の方も場内には多く見受けられた。


 重厚かつ荘厳な音色へ導かれるように、ゆっくりと黒い幕が開かれた。場内中の人たちが高く手を掲げて音を鳴らしだす。その音へ導かれるようにメンバーらが次々と舞台へ登場。そのたびに上がる熱い声・声・声。高まる期待。高ぶる感情。そして‥。


 ドラムカウントを合図に、ミスイは、弱虫(観客)たちが熱情するままに高く掲げた手の花を大きく揺らすように『花吹雪』を叩き付けた。お立ち台に左足をかけ、前のめりの姿で煽る柳。演奏陣の誰もが身体を大きく折り畳み、弱虫たちへ次々と豪圧な音を勢いよく叩き付ける。胸を揺さぶる歌と和心を抱いた旋律。そして身体をなぶる重厚な音が舞台の上から降り注ぐ。その刺激に向け、熱狂の声を荒らげ、激しく身体を折り曲げ、突き上げた手を大きく揺さぶり、5人へ戦いを挑む弱虫たち。冒頭からこの空間には、理性を消し去る景色が赤々と描きだされていた。


 彼らはけっして攻撃の手を緩めることはない。たとえ相手が弱虫たちだろうと。いや、同じ属性を持つ仲間たちだからこそ、5人は手を緩めるどころか、さらに牙を剥き出しに襲いかかる。『日陰に咲く花』でも次々と攻撃的な音を叩き付け、弱虫たちの身体を揺らし、折り畳み、ともに熱狂のその先の景色へ突き進もうとしていた。身体を90度以上曲げてヘドバンをする様や、柳の煽りを受けて飛び跳ねる一体化した熱狂ぶりは、まさに野獣と野獣の戦いの様のよう。泣きの落ちサビで心を濡らしながらも、騒ぐ衝動はけっして止まることはなかった。


 立て続けに『荊棘と眠る』へ。胸を揺さぶる歌に心が嬉しく震える。同時に、奮い立つ感情を抑えられない。だから2人のギター陣の高く掲げる手をつかむように、大勢の弱虫たちが手を振り上げ、気持ちを荒々しく揺さぶる演奏に合わせ、ときに大きく花咲き、身体を激しく折り畳み続けていた。柳に向かって響く絶叫した声の数々も、嬉しく気持ちを奮い立てる。


 「弱虫たち、思いきり楽しむ気あんのか?!もっとその気持ちを曝け出してこれますか!俺の言うことに従えんのかよ。お前の理性なんてめちゃくちゃにしてやる。君を抹消する。今からお前らは、俺の支配下だ」。柳の言葉を合図に、重厚な音が身体へとぐろのようにまとわりつくミドルヘヴィ系の『抹消』を演奏。メンバーらへ忠誠を誓うように、大勢の弱虫たちが大きく唸るリズムに合わせて、身体を激しく揺さぶる。今はただ、唸る音と呪詛のような柳の言葉へ連れ出されるままに身体を揺らし、頭を振り乱し続けていたい。そうすることが快楽とでも言うように‥。柳の歌声の指揮に合わせて、大勢の弱虫たちが身体を揺さぶる様も、圧巻だ。


 ミスイは立て続けに『ねんねんころり』をぶち込んできた。狂気を帯びた、いや、荒れ狂う牙を剥きだした歌と演奏に触発された弱虫たちが、激しく駆ける演奏へ身を委ね、同じように激しく身体を折り畳み続ける。無数のレーザーの輝きが飛び交う空間の中、誰もが本能のままに頭を思いきり振り乱し、限界を超えた先に広がる熱狂へ浸り狂っていた。


 演奏が止まるのをきっかけに、場内中からメンバーの名前を叫ぶ声が飛び交い続ける。もはや狂気の様だ。でも、それこそが、ここに似合う景色なのも事実だ。


ズブズブな弱虫に染まった人たちへ投げつけたのが、ミスイ流のダンスロックな姿を示した『ドーパミン』。タイトル通り脳内からドーパミンがあふれだす、ヤバい刺激を注ぎ込む楽曲だ。痛く躍動するビートに乗せ、上へ上へと高く飛び続ける観客たち。ときには柳の歌に合わせて振り上げた手を花のように揺らしながら、この空間に毒まみれの花を咲かせてゆく。途中に見せた、場内の人たちが一斉に髪の毛を振り乱しヘドバンに興じる様は、最高にカオスだ。でも、そのカオスを彼らは求めたくて、攻撃的なダンスロックナンバーを通して描き続けていった。


次に叩き付けたのが、このツアーで育て続けてきた新曲の『十中八苦』。冒頭から、弱虫たちの熱狂した声と振り上げた腕。さらに大きく前後に身体を揺らす様が描きだされる。ノイジーな音を次々と叩きつけるメンバーたち。巧みに楽曲を展開しながら、5人は、弱虫たちから理性を奪い去り、熱狂にひれ伏す狂信者へと染めあげていった。途中に、左右へモッシュする様も飛びだすなど、ライブハウスという空間へ熱狂を描きだすに相応しい楽曲の誕生だ。


                   

場内中に響き渡る、身体の神経を逆撫でるような天音のギターの旋律の数々。神経を次々とぶち切るような音が、この場にいる弱虫たちを暗い闇の奥へ奥へと引きずり込む。カオスでサイコな様に人の意識を塗りかえる『タメライキズ』に触れ、痛い恍惚を覚える。まるで心の傷へ痛い言葉を塗り込むような歌と演奏だ。「サヨナラ」の言葉と同時に柳が倒れるのに合わせ、楽曲が一気に荒ぶりだす。巧みに緩急をつけながら、ミスイは心の中に巣くう救いようのない感情を、大勢の弱虫たちの眼前へと突きつけ、一人一人の身体や心へ、ためらうことのないジクジクとした傷を刻んでいった。


 心むせびなく天音のギターの旋律が響きだす。そこへドラムカウントを合図に、巧みに空間を活かした音たちが、歌と演奏の絵筆を通して、この空間に哀切な物語を描き出す。『呼吸』、なんて胸を痛く刺し続ける曲だろう。気持ちがチクチクとした痛みを感じる。2本のギターが繰り出す旋律に、弱虫たちはさらにチクチクと刃先を身体へ押されるような感覚を抱きつつ、その痛みへ恍惚を覚えるように歌や演奏に浸っていた。


ふたたび、デジタルなビートが流れだす。楽曲が『汞』を演奏するのに合わせ、大勢の弱虫たちが一斉に左右へモッシュし始めた。柳やメンバーたちの煽る声に合わせ、その場で大きく飛び跳ねる弱虫たち。この曲の間中、弱虫たちは一切止まることなく、みずからの身体をずっと揺さぶり続けていた。体力の限界?そんなものを忘れさせる熱狂が、今、目の前には広がっている。そこを超越し、一緒に熱狂の僕となって騒ぎまくってこそ、ここにいるのに相応しい。


 「チッ…うっざ」の言葉を合図に、ミスイはさらに攻撃性を増した姿を持って『ウザい』を叩きつけた。高速ビートが飛び交う空間の中、弱虫たちも、これまで以上に速度早く頭を揺らせば、煽る柳の姿へ向けて、次々と逆ダイをぶちかましていた。阿鼻叫喚??そこまでは言わないが、誰もが感情の牙を剥きだして、思いきり身体をぶつけ続けていった。


 ライブも終盤へ。YouTube配信で再生回数が特に多かったのが初期から演奏をし続けてきた『這いずる』。ヘドバンをするように首を左右に傾げる様を弱虫たちがライブで見せてゆく。その様も印象的なライブ曲だ。「天国まで逝っちゃって」の声を合図にミスイは『這いずる』をぶちかました。柳の頭を傾げる姿に合わせ弱虫たちも頭を左右に傾げるたびに、そこにはヘドバンする頭が綺麗に揃う景色が生まれる。その不思議な現象も作りながら、この曲でもミスイは、弱虫たちを飛び跳ねさせれば、一緒にシンガロングしてゆく様も作りあげていった。


止まることなく、ダークで重厚な音を武器に暴れ狂う『いないいないばあ』へ。冒頭から「Oi!Oi!」と熱情した声を交わしあえば、柳の動きに合わせて一緒に動きを真似ながら、この曲でも弱虫たちが、この場にヘドバンに興じる様を描きだしていった。お立ち台の上に立ち、スタンドマイクを振り回し熱唱し続ける柳。さぁ、その様へ思いきり身体を折り畳み、ひれ伏し続ければいい。


「もっともっと気持ち良くしてくれますか!!その弱い心を、もっと俺に味あわせてくれないか!!」「あぁ…嫌だ、こんな人生は!」の声を合図に、この場へ素晴らしい熱狂したモッシュの景色を描きだそうと、彼らは『「限界です」』を叩きつけた。メンバーらがヘドバンをしながら演奏をする姿に合わせ、場内中の弱虫たちもヘドバンに興じてゆくのはスタンダード。誰もが高く中指を突き立て、思いきり上へ上へと跳ね続けていた。下手や上手の観客たちを激しく煽る柳の姿へ向けて、無数の絶叫が飛び交う。とにかく狂っていなければ気が済まない。


その気持ちをさらに増幅するように、ミスイは『バカ』を演奏。いや、『バカ』を通して、さちに過激な喧嘩をふっかけてきた。互いが限界を超える勢いで暴れ、手の花を満開に咲かせ、床へ頭を叩きつける勢いで身体を折り畳んでいた。間奏では、2本のギターが巧みに絡み合い、意識を狂気と恍惚へ導く音を演奏。とにかく、馬鹿になって騒ぎまくれ。それこそが、今は快楽だ。


「お前らがどこで指差され笑われても、俺らだけは(お前らの)居場所でありたい。そして、お前らの声で俺のすべてを汚してほしい」。ミスイが最後にぶちかましたのが、このツアーでのみ会場で販売し続けてきたCD曲の『バイバイ麻痺』。演奏が始まるのに合わせて飛び跳ねる景色が生まれれば、柳の動きに合わせて飛び跳ねながら敬礼をする場面も誕生。真っ赤な照明とレーザーの光に染まった空間の中、誰もが滾る血潮を燃やすように。そして、メンバーらへひれ伏すように身体を揺さぶり続けていった。終盤、この会場の床を揺らす勢いで跳ねる弱虫たちの景色も最狂だった。

  

 アンコールは、ふたたびこの空間をカオスな様へ染めあげようと、ミスイは『3004g』を演奏。手にしたマイクを突きつけるように歌う柳の姿も印象的だ。胸を揺さぶる美メロな曲を、高ぶる感情のままに歌う姿に胸が熱くなる。奮い立つ柳の感情を、演奏陣がさらに重く痛く研ぎ澄ました音にして表現。その様に触れて、場内中の弱虫たちが声を張り上げ、拳を高く突き上げていたのも、今や当たり前の景色だ。


続いてミスイがぶちかましたのが、理性の感情をすべてぶち切る勢いで、弱虫たちを暴れ狂う猛者に染め上げる『グルグル巻き』。柳の導く声に合わせ、拳を突き上げ、手を鳴らし、掲げた腕を高く突き上げて飛び跳ねる。この曲では、ヘドバンやジャンプ、折り畳みはスタンダード。その上で、メンバーと弱虫たちが無限に続くようにスクワットをしてゆく。まさにスクワット地獄(天国?)を、演奏が止まるまで延々と味わい続けられる楽曲だ。メンバーのソロ回しならぬスクワット回しを見せてゆくのも、ミスイならではの景色?!むしろ、限界を超える勢いで互いに屈伸し続けてこそ、ライブで味わう『グルグル巻き』だ。


「もっともっとその弱さを、ここにぶち撒けてほしい、弱虫!!」の声。ここで彼らが突きつけたのが、活動初期からミスイのライブへ熱狂の様を描き続けてきた『焼却炉』。すべての業を燃やし尽くす勢いで楽曲が暴走すれば、弱虫たちも声を張り上げ、熱情した猛者として暴れ狂う。サビでは、胸揺さぶる歌に気持ちを重ね合わせつつも、身体はずっと熱狂の虜になって猛り狂っていた。


「一緒に生きてくれてありがとう」。最後にミスイが奏でたのは、春のツアーの終わりに似合う『春の待ち人』。ミスイは最後の最後まで攻撃の手を緩めることはなかった。たとえ胸を揺さぶる歌系の楽曲だろうと、弱虫たちは、荒ぶる音を繰り出す演奏に乗せ、高く手を振り上げ、歌を胸の奥でしっかりと受け止めながらも、手の花を揺らし、拳を振り上げ、彼らが突きつけた痛い音楽の衝撃をしっかりとつかみ続けていた。


6月からは、新たに夏のツアーが始まる。この熱狂を、ぜひ各地で感じてもらいたい。


PHOTO: Kiwamu (Starwave Records)

TEXT:長澤智典


セットリスト

『花吹雪』

『日陰に咲く花』

『荊棘と眠る』

『抹消』

『ねんねんころり』

『ドーパミン』

『十中八苦』

『タメライキズ』

『呼吸』

『汞』

『ウザい』

『這いずる』

『いないいないばあ』

『「限界です」』

『バカ』

『バイバイ麻痺』

-ENCORE-

『3004g』

『グルグル巻き』

『焼却炉』

『春の待ち人』


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