ここに集まった人たちは知っている。彼らが示す地獄が、自分たちにとっての極楽だということを…。ミスイ、始動5周年記念単独公演「幸弱論」公演レポート!

今年、ミスイが積極的に行い続けた活動は、この日に最高の姿を描き出すためだった。9月27日にミスイは、渋谷WWWで始動5周年記念単独公演「幸弱論」を開催した。熱狂に包まれた当日の模様を、ここへ記したい。


 荘厳かつシンフォニックな楽曲(SE)に乗せ、ゆっくりと幕が開く。音楽へ導かれるようにメンバーらが舞台へ。響き渡る声・声・声。そして…。まるで心の内を映すように、歪んだギターの音色が響き渡る。LANA-ラナ-の感情揺さぶる激しいドラム演奏を合図に、楽曲は一気に駆けだした。疾走する曲の上から響き渡る哀愁を覚えるギターの旋律と、魂を痛く揺らす切なさを帯びた歌声。ミスイは『呼吸』を通し、悲しみに揺れる思いで、この場に足を運んだ一人一人の心をギュッとつかんできた。


 「帰ってきたぞWWW!!」の声を合図に凄まじいブラストビートが炸裂。ミスイは『ねんねんころり』を叩きつけ、弱虫(観客)たちから理性を一瞬で奪い去り、暴れ騒ぐ獣へ変えてゆく。柳が激しく身体を揺さぶり歌うたびに、フロアの弱虫たちも身体を折り畳み、ときにヘドバンしながら、沸き立つ感情をぶつけ返す。ミスイにとって、二度目となる渋谷WWWでのワンマン公演。前回は、目標達成の動員までには至らなかった。その悔しさを5人は、みずからの感情を暴欲的な歌声や演奏にして、この日しっかりと返していた。


弱虫たちを煽る柳。歌始まりの『バカ』でもミスイは、沸き立つ感情を激しく黒い音の弾にし、弱虫たちへ挑むようにぶつけてきた。メンバーらが思いきり90度の角度で折り畳む姿に合わせ、フロアでも大勢の弱虫たちが身体を折り畳み、ときに華麗に華を咲かせ、熱情した思いを5人にぶつけ返していた。刺々しい演奏の中でも、心を揺さぶる柳の歌声に気持ちが惹かれる。


レーザーが飛び交う真紅に染まった舞台の上で、身体をキリキリと締めつけるヒステリカルな演奏を通して、ミスイは『バイバイ麻痺』を歌い奏でていた。ヒリヒリとした痛い演奏に刺激を受け、身体を揺さぶり続ける弱虫たち。途中、奈落へ引き込むようなダークな様も組み込み、そこから一気に感情を剥き出しに迫る。スリリングなその展開が、感情の螺子を次々とぶち壊す。


「我々ミスイ、首を傾げ続けて5年が経ちました。思う存分首を傾げてみませんか!!思いきり傾げろ!!」「天国までイッちゃって」と叫ぶ柳の声を合図に飛び出したのが、『這いずる』。これまで以上に前後左右へ首を傾げ、サビではその場で思いきり飛び跳ね、シンガロングする弱虫たち。ライブはまだ序盤。でも、序盤や終盤など関係ない。1曲ごと、どれだけ互いに生々しい感情をぶつけあえるかが、この日を楽しむためのルールだ。


 「我々の結成を振り返って、お祝いして、今、この瞬間を共に生きようというライブです」。この日は、いろんな時代のミスイの姿を巡りながら、過去の曲も、ブラッシュアップした今の姿で提示していた。どの楽曲も、胸に突き刺さるのが嬉しい。


「モッシュはいけるかー」の声を合図に『汞』が飛び出した。演奏が始まったとたん、大勢の弱虫たちが両手を高く掲げ、左右に跳ねるように移動する。柳の煽りに向け、ひと際高く飛び跳ねる様や、腰をグッと落として頭を振り乱す姿も、熱狂がスタンダードのミスイのライブらしい景色だ。


止まることなく、『ただいま』へ。ヒステリック/美メロな旋律を奏でるギターの音色も印象的だ。でも、歪みを上げた音を切り刻むのに合わせ、ミスイらしい荒々しい様に進化していくのも嬉しい魅力だ。サビでは、柳と弱虫たちが高く掲げた手を一緒に左右へ大きく振り、気持ちを一つにしてゆく。間奏では、湊人の猛り狂ったギターの演奏が炸裂。狂気と親しみやすさの両面を巧みに織り交ぜるからこそ、身体は熱を求めながらも、耳や心は歌や美メロに惹かれてゆく。


湊人が重厚な音を切り刻む。その上で柳が語りだす。その声を合図に地を這うような重い衝撃を持ったダークな演奏が、弱虫たちの上に伸しかかる。ミドル&ヘヴィな『抹消』に乗せ、ゆったりと、でも、より一層大きな動きで身体や首を揺らし、ときに声を張り上げる弱虫たち。後半、一気に速度を上げて襲いかかる展開も、興奮を呼び起こす嬉しい要素だ。


 青白いレーザーの光が飛び交う方向へ向かうように、開放的な音色を持った演奏が黒い翼を広げて羽ばたきだす。『空白』に触れていると、胸の内から熱い思いが次々と込み上がる。痛々しい感情をぶつけながらも、彼らはその思いを解き放とうと歌い演奏していた。心の声を絶叫にしてぶつける柳の姿も印象的だった。


 荒々しいシンバルの音が鳴り渡るのを合図に、LANA-ラナ-のドラムソロへ。抜けの良い音を響かせ、彼は流れだした美しい楽曲の上へ、乱れ狂う感情の音を次々彩りだす。激しくも、流れるような演奏が耳に心地好い。そこへ3人の竿隊が加わるのを合図に、楽曲はいきなり激しい感情を露にした。フレットの上、超速で次々と音弾を繰り出すベースのTetsuya。ギターの湊人が攻撃的な旋律を次々と繰り出せば、ギターの天音はヒステリックな音を狂い咲かせる。感情を煽る3人のソロプレイが繰り返される中、柳の登場と共に、次の楽曲へ。


『ナイモノネダリ』の演奏が始まるのに合わせ、フロア中に生まれたヘドバンの光景。この曲では、短いスパンで緩急表情を変えながら、彼らは弱虫たちを騒がせ続けていた。気持ちの内側から込み上がる思いを、痛々しくも生々しい感情で歌う柳の姿も印象的だ。


「もっともっと脳味噌を溶かして、腐り落ちてくれますか!!」の声、さぁ、もっともっと脳味噌の中から快楽へと導くドーパミンを分泌させて騒ぎ狂え。ミスイ流のダンスロックナンバー『ドーパミン』に乗せ、メンバーと弱虫たちが豪快に頭を振り乱す。ときに飛び跳ね、ときには柳の歌声に合わせて掲げた手を左右に振るなど、弱虫たちはメンバーらと熱情したい感情のチューニングを合わせ、共に熱狂と興奮を貪っていた。終盤では、気持ちを高揚へと導くエモい歌と演奏に乗せ、ここにいる誰もが気持ちをエモく染め上げ、彼らの演奏と同期するように熱狂してゆく。


 メンバーらが手に扇子を持ち出した。ミスイは、この空間に過ぎ去った夏を呼び戻し、この場を夏祭りの景色へ染め上げる。一人一人が手にした扇子を舞い踊らせるたび、この場へ熱風を巻き起こす、最狂の祭りナンバー『一番星に願う事』を演奏。とても輝きを放つ、開放的で美メロウな楽曲だ。誰もが、5人と一夜の夏の想い出を巡る気持ちで祭り上がっていた。胸を温かく揺さぶる歌に、胸がキュンと鳴る。弾むように駆ける演奏に乗って、ずっとずっと騒いでいたい。


 ふたたび、荒ぶる感情と感情をぶつけあおうか。『低反発ドリーマー』では、柳と弱虫たちが声を荒らげ、剥きだした熱い感情を互いにぶつけあう。その様を、歪む重い演奏で煽る楽器陣。喉を潰す勢いで歌い叫ぶ柳。同じようフロアでも限界など忘れ、喉が潰れる勢いで声を張り上げ騒ぐ弱虫たちがいた。


 柳と弱虫たちによる「あー、嫌だ、こんな人生は」「限界です」 のやり取りを合図に、『「限界です」』へ。誰もが最初から理性のストッパーを壊し、左右にモッシュすれば、全力でヘドバンをしていた。柳と一緒に中指を立てて声を張り上げる、この瞬間瞬間に命をかけてぶつかりあえることが最高の喜びだ。柳は、喉が壊れる勢いで歌い叫んでいた。その気迫を受け止めた弱虫たちも、「限界です」と声を張り上げながらも、限界など忘れ、夢中で騒いでいた。


 身体を切り刻むソリッドな演奏が爆走。その演奏に振り落とされまいと、弱虫たちが全力でヘドバンしてゆく。激メロな『日陰に咲く花』では、柳の胸を溶かす美メロな歌へ酔うように、大勢の弱虫たちが手で華を咲かせていた。その様を、攻撃的な演奏で煽る楽器陣。魂を揺らすその歌にとろけながらも、熱狂に身を預けていたい。そんな心境だ。


 「すべて、燃やし尽くせ!」。ミスイは最後に、始まりの歌『焼却炉』を、これまで以上に感情を露に叩きつけ、弱虫たちの感情を限界まで燃やしていた。熱狂せずにいれない。メンバーと弱虫たちが巨大な一つの炎となって、すべてを燃やし尽くす勢いで騒ぎ狂う。魂を奮わせて歌う柳の歌声に心奮えながら、ずっとずっと咲き狂っていたかった。


活動初期に使っていたSEに乗せてメンバーらが舞台へ。アンコールは、ミスイ流のヘドバン式ピアノロックナンバー『劣化アリ』からスタート。勢い良く駆ける楽曲の上で、感情をほとばしらせて歌う柳の姿も瞼へ鮮烈に焼きついた。変拍子を用いた転調も豊かな楽曲の上へ、彼らは歌い奏でる音の絵筆で激情という色を塗り上げていった。


 止まることなく、『春の待ち人』へ。春に行った全国ツアーのとき、よく耳にしていた刹那メロウ/激エモな楽曲だ。ここへ至るまでのライブの日々も思い返しながら、改めて、共にここへ辿りついたことに嬉しさと、噛みしめる思いを覚えていた。胸に手を添え、思いを零すように歌いあげる柳の姿も、印象深く見えていた。


この日は、残念ながらSold Outには至らなかった。その悔しさを、ミスイは『嗚呼、無様』に乗せて全身全霊で叩きつけた。弱虫なメンバーにとって、悔しがり、反発する力こそがエネルギーや輝きになる。この曲で、5人と弱虫たちが剥きだした感情をぶつけあう様へ触れるたび、ねっとり身体を濡らす汗を通してその熱を感じるたびに、「なにくそ!」という力が沸いてくる。


終わり間際に近づいたところでミスイがぶつけたのが、ライブ中に何度も何度もスクワットを繰り返す『グルグル巻き』だ。グロウルする柳。メンバー全員が感情を剥き出しにぶつかる。それは、弱虫たちも一緒。会場中が一体化して見せたジャンプやヘドバンの景色。メンバーらと弱虫たち全員が一斉にスクワットする景色は、何度見ても壮観だ。体力の限界なんて言葉はとっくに消えていた。舞台の上から感情を煽る音が途絶えない限り、この場に限界なんて言葉が存在することはない。


「俺たち5人と一緒に地獄へ落ちろ!それが俺たちの幸弱論だ!!」。最後にミスイは、ヘドバンの嵐を巻き起こし、激しく手の華が揺れる景色を描きだす『地獄行き』を演奏。ミスイが見せた地獄は、弱虫たちを笑顔にし、明日も顔を上げて進む勇気を与える快楽の場だった。ここに集まった人たちは知っている。彼らが示す地獄が、自分たちにとっての極楽だということを…。


次は、来年2月に行う「関東集中砲弱」ツアーで遊ぼうか。いや、日々たくさんライブがあるから、またライブハウスで笑顔でエクササイズしようじゃないか!!!!!


TEXT:長澤智典


セットリスト

『呼吸』

『ねんねんころり』

『バカ』

『バイバイ麻痺』

『這いずる』

『汞』

『ただいま』

『抹消』

『空白』

~ Drum solo ~

~ 楽器隊 session ~

『ナイモノネダリ』

『ドーパミン』

『一番星に願う事』

『低反発ドリーマー』

『「限界です」』

『日陰に咲く花』

『焼却炉』

-ENCORE-

『劣化アリ』

『春の待ち人』

『嗚呼、無様』

『グルグル巻き』

『地獄行き』


【公演情報】

2024年12月23日(月)

渋谷 Club Malcolm

【不定期コンセプトライブ vol.5】

50名限定★クリスマスワンマン

「きよしこの弱」

開場 17:30 / 開演 18:00

前売 ¥4,000 / 当日 ¥4,500(各D代別)

[出演]ミスイ

☑ 衣装:クリスマスっぽいヤツ

▼詳細▼

https://ameblo.jp/misui-official/entry-12869077978.html


ミスイ主催公演ツアー

「関東集中砲弱」

2025年

2/4(火) 水戸 club SONIC

2/5(水) 柏 Thumb Up

2/10(月) 川崎 Serbian Night

2/14(金) 宇都宮 HELLO DOLLY

2/20(木) 前橋 DYVER

2/21(金) 浦和 Narciss

-TOUR FINAL-

2/26(水) 高田馬場 CLUB PHASE ★湊人バースデー★

※詳細後日発表


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